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最高裁判所第一小法廷 昭和38年(あ)1657号 決定 1964年5月07日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人高橋嘉門の上告趣意は、単なる法令違反の主張であり刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(刑訴四〇二条のいわゆる不利益変更禁止の規定に違反するか否かは、第一審、二審において言い渡された主文の刑を、刑名等の形式のみによらず、具体的に全体として綜合的に観察し、第二審の判決の刑が第一審の判決の刑よりも実質上被告人に不利益であるか否かによって判断すべきものであることは、当裁判所の屡次の判例〔昭和二五年(あ)第二五六七号同二六年八月一日大法廷判決集五巻九号一七一五頁、昭和二五年(れ)第四九四号同二五年八月九日第二小法廷判決集四巻八号一五五〇頁、昭和二八年(あ)第三四三四号同年一二月二五日第三小法廷判決集七巻一三号二七四九頁、昭和二九年(あ)第二六四九号同三〇年四月五日第三小法廷判決集九巻四号六五二頁、昭和三四年(あ)第二一八二号同三七年六月一八日第二小法廷決定集一六巻七号一二六五頁参照。〕とするところである。本件において、被告人に対する自由拘束、法益剥奪は実質的にいずれが重いかを具体的綜合的に考察すれば、第一審判決が被告人に対し禁錮二年六月の刑を言い渡したのを原審が懲役二年の刑に変更したからといって、原判決が第一審判決の言い渡した刑を被告人に不利益に変更したとはいえない。)

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 長部謹吾 裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤朔郎 裁判官 松田二郎)

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